(もう日が経ってしまったが)6月15日、統合問題の行方が心配されていた、「三和・東海・あさひ」のあさひ銀行の離脱が正式に発表された。
  本サイトでは、クレジットカード問題を取り上げており、また、このあさひ銀の離脱によるクレジットカード業界への影響は少ないと思われるが、以前のレポート(vol.6)で、この3行問題を取り上げていることもあり、今回はこの問題に触れておきたい。
  実は、あさひ銀行の離脱問題は今に始まったことではない。三和銀が参加を表明する前から、東海・あさひの間で、かなりの軋轢があったと言われている。これに関しては、vol.6でも触れたが、もう一度記しておこう。
  2行間(東海・あさひ)には、クレジットカード会社に関しての軋轢があった。東海サイドが「統合会社の発行するカードは、ミリオンカードしか考えられない」との強硬姿勢を見せていたからである。一方、あさひサイドには、「これまでの発行会社を切り離すことは、これまでの顧客を見捨てることになりできない」との反発があった。また(vol.6では触れなかったが)、あさひ銀の店舗は東海銀と隣合わせ・真向かいの箇所も多く(例えば東海地方では大曽根・春日井、関西地区の河内長野市千代田地区など)、しかも、あさひ銀の地盤である埼玉県の北部地区でも東海の店舗が幅を利かせている箇所(久喜・蓮田など)があり、これらの場所で東海銀側があさひ銀に譲ることを全て拒否しているという噂までたっていた。
  またどの銀行でも同じだが、システム統合の問題でも大きな壁を作っていたようである。2行は、勘定系・ATMシステムも全く異なるメーカーを採用しているのである。
  こうした不安定なペアの中に、三和銀が入ったことにより、あさひ銀内部では「なんの為の統合か?」といった意見が大勢となっていく。三和は、首都圏・関西圏に強固な地盤を持っており、あさひの地盤でもある首都圏で営業基盤が重なることになる。そして、三和・東海の合併構想が発表されるとあさひ銀内で一層の反発が起きたのである。
  さて、実は三和・東海の合併構想には裏があるともいわれている。
  東海側が、同行と親密関係にある千代田生命の救済を三和に「お願い」する代わりに、「合併」をのんだというものである。
  現在、千代田生命は経営内容が芳しくなく、東海銀の大株主でもあることから、同銀にとって経営を揺るがしかねない問題となっている。最近の生命保険会社の度重なる破綻により、千代田に対する風当たりが強くなってきており、東海銀としても早く片づけたい問題となっている。
  結局この処理を急いだために、あさひ銀の反発を招いたともいえる。

  東海銀は、三和銀との合併を検討するに際し「マイナス要因」を綿密に計算したとも言われている。都銀同士が合併するようになってから、東海銀は「東海が吸収されるような合併は行わない」と、名古屋財界向けに事ある毎にに発言していた。名古屋の財界を敵に回すようなことは「マイナス」だと考えていたからである。しかし結局、東海銀より上位ランクの三和銀との合併構想を発表することになった。同行では「いかに名古屋財界を納得させるか」が検討されたようである。東海銀は「三和は営業基盤が首都圏・関西圏であり、東海の営業基盤とは重ならないのでこれまでの名古屋重視の経営は変わらない」と発表。とりあえずは名古屋財界の反発をかわしている。
  これに対し、財界は冷ややかな目で見ている。
  愛知県では現在、2005年の万博開催に向けての準備が進められている。県では地元の大手企業に対し協力(つまりは出資)を要請している。8月にはさらなる要請に対し、東海銀がかなりの額を積み増ししたのである。これに対し、とある企業トップなどは「地元の機嫌取り」と発言したとも言われており、東海銀と他の企業との関係の溝は深まっている。
  さらに、2000年の株主総会では、「東海は三和に飲み込まれるのではないか?」との質問も飛び出している。

  ここのところ、この統合問題は一段落ついたと思われる。三和・東海両行は統合、そして合併に向けて動いている。
  しかし、まだまだ火種は残っており、果たしてどこまで統合が進むのかが、当面の課題といえる。

(2000.9.7)

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