「流通系カード:百貨店・スーパーなどが(自社内での顧客利便性・管理のために)発行するカード」

 流通系カードとは何か。その答えである。もともと流通系カード会社は、自社内もしくは自社グループ内の為のカード会社である。
 例えば、セゾンカードでお馴染みのクレディセゾンは、もともと西武百貨店のカ−ドで、セゾングループのカードであり、イオンクレジットサービスは、もともとジャスコのカードで、イオングループのかーどであり、これらはいずれも流通系カードである。また、丸井や大丸(百貨店)のハウスカードなどのカードも流通系カードである。セゾンやイオンは、VISAやマスターなどとの提携により世界各国で使え、逆に丸井のハウスカードなどは自社内でしか使えない。また、セゾンやイオンのように別会社が発行するものや、丸井のように自社発行のものまである。
 しかし、元々自社内カード発行会社であったはずの流通系各社から、最近は、全く他社の提携カードが発行されるようになった。
 まずは、日本テレコムカード。VISA・JCB・ミリオンといった銀行系に混ざって、流通系のイオンクレジットサービスとの提携カードが発行されている。
 また、元々同業他社グループの提携カードを発行した流通系カード会社もある。クレディセゾンである。同社は全くグループ違いの名鉄百貨店の「Meiカード」を発行している。
 では何故このように、他社カードの発行をするようになってしまったのだろうか。
 日本テレコムカードについては、テレコム側のメリットとして、
1.顧客管理ができる
2.クレジットカードを使ったキャッシュバックサービスで顧客の囲い込みができる。
3.通話料金の回収が簡易化される。
とあげられるが、AEON提携カードのうまみとして
4.年会費負担(盗難保険料:年間70円のみ)無くキャッシュバックがうけられることを武器に顧客に広め、上記3点のメリットを享受する。
こともあげられる。
 また、Mei-SAISONカードの場合、同時に発行されたMei-メディアカードと
1.年会費無料なので顧客にすすめやすい
2.会員募集のコストを自社グループで負わなくてすむ
といった違いがある。
 では、カード会社にとっては、どのようなメリットがあるのだろうか。流通系カード会社に特有のものとして
1.他社グループの顧客情報がわかる。
2.他社グループを使って、自社グループにもその顧客を取り込める
などがあげられる。これは、もちろん、カード会社がそれによって得た他社グループの顧客情報を自グループに漏らすことは、指していない。あくまで、他社グループの顧客を、自社グループ顧客の「予備軍」としてキープしておくにすぎない。が、これにより、まったくの第三者よりも一歩も二歩もリードできるのである。
 また、カード会社には当然、ショッピングなどによる手数料収入も入るわけで、手数料収入が頭打ちになっている現状では、うまみがあるのである。
 このようにして、流通系カード会社の「カード会社化」がおこっているのである。
 では、このまま際限なく流通系カード会社からの提携カードが発行されていくのかというと、疑問符が付く。
 それは、ある百貨店がカードの発行を他社グループのカード会社に依頼することは顧客情報の管理上考えにくいからである。というと、Meiセゾンはどうなるのかという疑問をもたれる方もいるかもしれない。実は、名鉄グループとセゾンカードとの付き合いは長く、メディアカードとセゾンカードとは(業務上最低限の一部のみだが)提携しているということ、そして、西武百貨店が名鉄百貨店の地盤である名古屋市内になく、競合が少ないということでこの提携が実現している。つまりは、西武百貨店と競合した地域の百貨店からセゾンとの提携カードが出ることは全く考えられなく、それはどの流通業にも共通したことなのである。
 それに、どのカード会社でも両社のようにお呼びがかかるというものでもない。提携先企業が流通系カード会社と提携する理由に、上記の「年会費無料」という重要な要件があるからである。逆に言うと、年会費の必要なカード会社は「お呼びでない」ことになる。つまりは、提携先企業もカード会社も「年会費無料」を武器にして、販拡していかなければならないのである。最近は、一部信販系カード会社からも年会費無料のカードがでており、この「無料戦争」もますます激しくなっている。これは、年会費の安い流通系カード会社にとっては驚異であり、その「武器」の強みが薄れていく懸念もある。
 こうしてみていくと、流通系各社の「カード会社化」には限界があり、その限界も近いと言わざるを得ないのだ。

(1999.6.29)

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