ここ2・3年、金融業界で、徐々に伸びている分野があるのを、ご存じだろうか。
 まず、消費者金融が伸びている。無人契約機の導入によって、人々の「借金するのが恥ずかしい」という心理をものの見事に取り除き、業界全体では堅調に伸びている。
 そして、もう一つは、クレジットカード業界である。
 というと、「この消費不況の中、そんなことはないだろう」と、お思いの方もいらっしゃるかもしれない。しかし、ここのところの取扱高は、毎月5%前後の伸びを続けているのだ。手元の資料が少々古いが、96-97年の伸び率は12.0%。そして、99年に入ってからも、堅調に伸びが続いているのだ。
 その要因として、流通系各社の系列店舗における積極的な入会勧誘や、ここ2・3年航空各社と相次いで提携して発行した、マイレージバンク付のカードがヒットしたことによる取扱高の上昇が挙げられる。
 しかし、この数字には多少のトリックもあり、業界全体では伸びているが、銀行系各社は、取扱高を若干減らしているという現実がある。そしてその減少分を埋めているのが、流通系各社なのである。
 流通系各社は、グループ力を生かして、グループ各社内での利用促進のため、自社売場でのノーサイン化(UCSなど)を行ったり、系列コンビニでの利用を可能に(AEONクレ)したりと取扱高の向上を図るべく、利便性を向上させているのである。
 では、これからも同様に取扱高が上がるのかというと、難しいと言わざるを得ない。上述したような市場拡大策は、もはや限界まできているといえるし、新規会員も既にカードを持っている人が多く、新たな(クレジットカードの)顧客とはなっていないからである。現に、カード各社のカード発行枚数や取扱高は増えているが、カード1枚あたりの取扱高は、かなり減っているとの統計もある。
 つまり、今後は、業界全体での拡大は難しく、限られたパイを各社で奪い合う競争しか残されていないのである。今後この業界では「何か」を発明しない限りは、生き残れないのである。

(1999.5.17)

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